最初にレインハウスの住人になったのは双子の黒猫シルバとムーンです。
夏が終わった日の次の月曜日。 昼下がりにふたりはやってきました。

「こんばんは。詩人さん」
「こんばんわ。わたしたちはシルバとムーンです」

「おす。ハロー。ってまだ昼過ぎだぞ。ちょっと早いんじゃないのか?」
「わたしたちは銀色の半月の夜に生まれました。こんばんわ」
「詩人さん。昼間の月は見えにくいけれど消滅したんじゃありません。  
 いまも世界のどこかを照らしているでしょう。こんばんは」

「ふむ。なんだかよくわかんないけど
 オマエらいいコトを言ってる気がする。
 ブログで使わしてもらってもいいか?
 おし。ゴホン。えーと。
 こんばんはシルバ。
 こんばんわムーン。
 こんな月の美しい昼下がりにこんなむさ苦しいところへ。
 ようこそ。美しき黒猫さん。詩人は身にあまる光栄です。

 んむ。意外といいかもしんないな。
 音楽業界の『24時間おはよーございます』よりよっぽどいい」

黒猫シルバとムーンはふたりとも 「銀貨をふたつに割った半月形のネックレス」をしています。

シルバ 「このネックレスは世界でたったふたつだけ」
ムーン 「切り口のギザギザを合わせると満月のカタチに」
詩人  「そっか。イカしたネックレスだな。オマエらは本当に仲がいいんだな」

「詩人さん。お言葉を返します。
  わたしたちは『なかよし』なんてレベルじゃないのです」
「詩人さん。光は影をつくります。夜というのは地球の影なんです」
「磁石にはプラスとマイナスがあります」
「それはどちらがどうとかじゃなくセットなんです」

シルバは過去のコトはすべて覚えていますが 未来のコトはなにもわからないのです。
だから「約束」ができません。
ムーンは未来のコトはすべてわかるのですが 過去のコトはなにもわからないのです。
だから「想いで」がありません。

「あのさ。オレと暮らしてたレインという黒猫はさ。
 ぜんぜん神秘的じゃなくてむしろ俗っぽかったんだな。
 オマエらの話は摩訶不思議でおもしろいよ。
 まあ何を言ってるのかわかんないとこもあるけれどさ。
 オレはさ。もしふたりが『地球誕生と同時に生まれた』と言われても
 あっさり信じちゃうと想うよ」
「詩人さん。わたしたちはそんなに長く生きていません」
「そうです。今日で5,000回目の誕生日です。
  そしてあときっかり5,000年生きます」

シルバとムーンは空をみながらよくヘンテコな唄をうたっています。

〜月ではウサギがおもちつき〜そいつを食べたら目が真っ赤〜
〜シルバームーンは宵の夢〜銀の半月ルナティック〜

「なあ。オマエら。というかムーンさ。
 未来がわかるのならレインのコトを教えて欲しい」
「かまいませんがわたしの予言は『ひとりに1回だけ』ですよ?
 それでもよろしいですか?最初で最後ですよ。」
「いつの時代もヒトは未来を知りたがり過去を忘れたがります」
「なんでもいいよ。オレはレインのコトが知りたい」


ムーンの予言

このレインハウスには 張り紙をみて自ら訪れたり

探偵が探してきたり 沢山の黒猫が訪れるだろう

その「100匹目の黒猫」がレイン

詩人はその100匹すべてと暮らすコトになるだろう

 

 

「なあ。シルバ。月の裏側ってどんなカンジなのかな?」
「わたしも何度か手伝いに行きましたが裏側では掃除をしています。
 いつでも綺麗に輝やくように月面をモップやシルクで磨くのです。
 シルクの布に息を吹きかけてぴっかぴかのツルツルに磨くのです」

詩人は古い物語を想いだしました。
「湖の水面に浮かんだ月を
 洗面器ですくい取ろうとした愚か者」の物語を。

「なあ。シルバ。銀貨ネックレスはイカしてるよな。どこで買ったの?」
「あなたにもらったんですよ。詩人さんが4000年前に海賊だっ た頃」

詩人は信じました。カンペキに信じました。
だって「黒猫のコトバを信じられなくなったらココロが終わり」でしょ う?

「なあ。ムーン。オマエらはあと5000年生きるんだろ?
 その頃にはオレもレインもみんな死んじゃってるだろ。
 オマエらはどこへいくんだ?ここへとどまるのか?」

「詩人さん。さっき言ったでしょう?  未来のコトは1度しか答えません」

 

ムーンの予言の通り黒猫がたくさん
レインハウスにやってきました。
そして100匹目にはレインが
「にゃままま〜」と帰ってきました。

レインも時々。
シルバとムーンと
いっしょに唄っています。
それはとても愛らしいのですが。
レインの音程には
いささか問題があります。

でもそれは。
ずっとずっとあとのお話です。

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