「ダイス。オレはギャンブラーになりたいよ。
一攫千金はオトコのロマンさ。
用心棒のギャラじゃ家の女房にもガキにも
いい暮らしさせてやれないからな」
ある風の強い夜。
深刻な顔で用心棒はダイスに言いました。
「ダイス。話がある。嫌なら断ってもいい。
実はガキが病気になっちまった。手術にカネがいる。大金がいる」
用心棒はタバコに火をつけました。 ダイスはなんだか胸がとくんとくんとしました。
「カネが欲しい。でもオレはサイコロが弱い。
地道にやってたんじゃあ大金は稼げない。一発勝負だ。
だから『イカサマサイコロ』を手に入れてきた。
これから勝負に行く。ここからが頼みだ。
オレが酔ったフリをしてちょっとした騒ぎを起こす。
その隙を狙ってテーブルのサイコロを
このイカサマサイコロとすりかえてくれないか?」
「ねえ。お金ならいままで用心棒から勝ったお金と
ボクのおこづかいがあるからそれじゃあダメなの?」
「全然足りないんだ。手術は大金がいるんだ」
ダイスは「イカサマがバレて痛い目をみたオトコ達」を何人も見てきたからとっても恐い気分です。
でも。
ダイスは用心棒にはたくさん優しくしてもらったから。
「やるよ。きっとうまくやってみせる。
用心棒には世話になってるから」
ダイスは緊張しました。とってもとっても緊張しました。
そしてダイスはしくじりました。 秘密カジノの親分に見つかってしまったのです。
「この黒猫!イカサマやりやがったな!
ふん。用心棒の差し金だな!野郎ども。
こいつらをやっちまえ!!」
用心棒が叫びます。
「ダイス!!トイレの窓から逃げろ。 そして何があっても絶対に戻ってくるな!」
ダイスは一目散で逃げました。
気がついたらダイスは知らない場所にいました。
ダイスは自動販売機の上に隠れました。 三日三晩そこでじっとしていました。
「用心棒はケンカが強いからきっと大丈夫だよね」
その次の日ダイスはあるオトコに話しかけられました。
「こんにちは。ボクは探偵だけどキミは黒猫レインかな?」
ダイスは探偵の「用心棒のようなダブダブズボン」を見て涙が出てきました。
思わずそのズボンに飛び込んでたくさん泣きました。
「どうしたの?恐い目に遭ったのかい?
レインハウスに行こう。そこには仲間がいっぱいだよ」
ダイスは詩人に「起こったコト」を話しました。
「よし。ここでいっしょに暮らそう。
用心棒のコトは探偵に調査させるよ。
そのかわり。イカサマはなしだよ」