新・最後のアジト




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新・最後のアジトact.2 「黒豚とウナギに 愛の鎮魂歌を」

 いつか忘れたけどある日テレビをテロ〜ンと眺めていた。
 それはグルメ番組のようなものでタレントが「イチ押しの店」を紹介するといった内容。
 たしかワタナベトオルさんだった。
 豚カツ屋にいく。なんとか産の黒豚でラードがどうでカツ丼が絶品で卵も激選していると。
 揚げ方などもこだわりがあると。そんで出来上がった。美味そうだった。タレントが箸を割る。
「おやっさん。例のものを」と叫ぶ。
 カオルは仰天した。ビッグサイズのマヨネーズ登場したのだ。
 それをウエディングケーキのデコレーションのように大量にカツ丼の上にかけてむさぼり食うのである。
 別にそれは「好み」だ。ケチャップでも砂糖でもマヨネーズでも好きなものをかけて召し上がればよい。
 だけど「おやっさん」の前でそれをするのは失礼じゃねーのかと。
 たぶん「おやっさん」は味・肉選びなど「ベスト」のモノを制作したはずだ。例えてみる。
 カオルがCDなどを創る。お客さんが買ってくれる。
「おいらはもっと低音がガンガンの方がいいな」
「アタシはステレオじゃなくてAMラジオの用にモノラルがいいな」。
 好みだ。好きに自宅や車内で自由に聴いて頂ければいい。
 でもレコーディングスタジオやライブのステージに昇り
 演奏中にアンプや音量の質感などを勝手にいじくられるのは嫌だな。

 以前友人と3000円ぐらいの鰻丼を食べたことがある。その時友人が店主に訊ねた。
「やっぱり炭で焼くのとガスでは違うんですかねぇ」店主は苦笑いしながら答えた。
「うん。違う。でも素人やアンタらみたいにタバコ吸うヒトにはわからないと思う」
「でもね。バレないと思ってガスでウナギ焼くような店はその制作過程で同様の手抜きをするんだよ。
 タレは化学調味料でいいや。養殖のウナギでいいや。クシも安いのでいいや。ね。
 で最終的に変な鰻丼が出来上がるんだよ。だから『マトモなウナギ』は2000円以下じゃ食べられないんだよ」
 我々は納得した。そして自分の「作詩作曲のプロセス」を振り返った。うむ。大丈夫だ。
 我々は全力で制作している。納得するまでがんばる。時間とお金が許すかぎり細部にまでこだわる。
 うん。やはり「美学」だ。
 カオルも努力するので皆様も「マトモなモノとニセモノ」を見分けられるようになりましょう。

 おしまい。







   
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