新・最後のアジト




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新・最後のアジトact.10 「プチブルジョアに8ビートの節約術を」

「節約術」みたいのがある。テレビで「節約の達人主婦」などが紹介される。
風呂の水を洗濯と食器洗いに使う。ペットボトルや空き箱で「収納ワザ」などをする。
食材も効率良く「大根の葉・鳥がら」なども捨てずに利用する。
「家計のため」「家を買うため」「単純に貧乏だから」。
水道代で「月1000円もお得」「電気をケチリ年800円浮かせる」。イイコトだ。地球にも優しい。
しかしカオルはその手の番組を見ているとなぜか「悲壮感・貧乏臭い」感じがするのだ。なんか「違う」感じがする。
 アメリカの「節約達人」を紹介している番組を見た。やっていることは日本の主婦と変わらない。
マーケットで「売り物にならないキャベツ」を貰ったり必要のない電気は使わない。
でも「悲壮感・ケチ臭い」ムードがない。むしろ明るい。
 フィリピンの「貧乏8人家族」の番組も見た。ママは内職と1歳児の子守り。パパは失業中。長女は「街の風俗」。
兄ふたりは「肉体労働」。
そんで7歳の妹と5歳の弟が「産業廃棄物の山」へバケツをぶら下げ「金目のモノを発掘」に行く。
生ゴミもタイヤも冷蔵庫もパソコンもペットボトルも分別なんてされていない廃棄物の山。
ふたりともマスクはしているがその山からくすぶっている「ダイオキシン・煙」などは防げないはずだ。
昼前から夕方まで幼い子供は発掘する。それを現金に変える。30円ぐらい。いい時は100円ぐらいになるみたいだ。
帰り道ふたりは手を繋ぎ口笛を吹いて帰る。絶対に生活レベルも環境も日本よりヒドいはずなのだがなぜか笑顔だ。
カメラに向っておちゃめな弟は「ピース」をする。そして「ツライ感じ・ギリギリの感じ」がしないのだ。
 なぜだろう。カオルは知恵を絞って推測してみた。
たぶん「ロックンロール」と「目的」に関係があるのではないのかと。
アメリカの白人主婦がキャベツを刻む。その刻む音が「8ビート」で実際ラジオから流れる「洋楽」にあわせて
体を揺すっている。フィリピンのふたりが帰りに吹く口笛もロックンロール。歩き方も8ビートだ。
でも日本の台所ではテレビから「ワイドショーの下品な笑い声や演歌・無意味なポップス」が流れている。
もちろん笑顔はない。むしろ「疲れている」し「必死な感じ」がする。そう「無理」をしているのだ。
 フィリピンの子供達は「ゴミ拾い」しか選択肢がない。
ゴミを拾わないと「生きていけない」のだ。だから「自然」なんだ。
アメリカの節約さんのひとりはこういった。「だってキャベツタダだしベジタリアンだし美味しいから。
節約の目的?それは月に1回旦那と贅沢したいからよ。オシャレして映画を見てフルコースを食べるためよ」
彼女は自然に笑いながらラジオから流れるロックンロールでリズムを取りながらそう語った。もちろん英語で。
フィリピンの子供も「英語」で答える。「駅前留学」は絶対にしていないと思うが「英語」で答える。
「だってパパはいまお仕事ないしママも子守りで大変だから。私は色鉛筆を買うの。
弟はサッカーボールが欲しいんだって」「でもいつかきっとパパは仕事を見つけるから。
そしたら旅行に連れていってくれるって。楽しみなんだよね」自然だ。無理してない。
 日本の家庭が「マイホーム」を欲しがるのは理解できるしカオルだって欲しい。
だけど「水道代を浮かせないとギリギリの暮らしの人」が「家を買う」のはとっても無理している様にカオルは感じる。
「自家用車でドライブ」や「家族サービス」のための方が自然な感じがする。30年ローン。カオルには理解できない。
30年だぞ。今あるお金で自然にいけばいいじゃないか。新築のマイホームで「ワイドショー」を見るんだろ。
節約して頭金を貯めたあとまた「ローンのために節約」するんだろ?「ほどほど」でいいんじゃないのか?
「分相応」でいいんじゃないか?それより旦那さんに長生きしてもらうために
「豪勢な手作り弁当」のがいいんじゃないか?
そんなに「必死」になることないんじゃないのか?
あるプライドさえ捨てれば「高級ホテルの生ゴミ」で充分「高級な栄養」を手に入れられるぞ。
「ニース風子牛のなんちゃらステーキ2万円」が「残飯としてポリバケツに移動した瞬間からタダ」なんだぞ。
 カオルは現在とてもビンボーだ。でもママがご飯を作ってくれているので煙草代以外は
「置いてきた猫6匹のエサ代」として元彼女に毎月送金している。猫がかわいいから。
写真立て・手作りアクセサリーなどでお金が増えれば「CD・本・映画」にする。
スターバックスなどでは「氷水」だけを飲むことも多い。
だって「買わない人はここにいちゃダメです」と書いてないし。
ガールフレンドなどが同席しているときは「コーヒーをおねだり」する。
そういう時に「ロック」すれば「ピアノで唄えば絵を描けば」なんとかなる。
 カオルは「世間」から「白い目」で見られる。別にかまわない。
よく「世間体」というがカオルは「世間から大切にされたこと」がないから「そんな世間の目」なんぞ気にならない。

「節約」の「反対語」ってなんだろう?
「無駄遣い」かな?
カオルが「巨万の富」を得たならば
「無駄遣いをし経済の活性化」に微力ながら協力する。

おしまい。
   
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