新・最後のアジト




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新・最後のアジトact.21 「強運の我々にデコレーションケーキのため息を」

街のあちらこちらにデコレーションされていたイルミネーションは取りはずされ
また「来年の乱痴気騒ぎの盛り上げ役」としての出番がくるまで
油性マジックで「クリスマス用電飾」と書き殴られた段ボール箱に押し込まれる。
ハダカになった落葉樹は午後の鈍い太陽に照らされてアスファルトに迷路のような影を落とす。

「メリークリスマス」から「ハッピーニューイヤー」までの中途半端に浮かれた街。
売春婦までが「年末総決算売り尽くしバーゲン」されているのかもしれない。
すっかりヒマになったケーキ職人が昼休みに暇つぶしで眺めるコミック雑誌のような結末。

大量に売れ残ったメリークリスマスケーキの残骸が値札が付けられたまま詰め込まれた
半透明のビニール袋を黙って無表情に処理していくゴミ収集人。
弱虫で悪者で嘘つきでスカンピンのオレは自分も
「燃えるゴミ」として処理されないように注意しながら
クリスマスパーティーに汚された街角にしゃがみ込んでいる。
すでに街はクリスマスを「なかったコト」にして正月用の作り笑いであふれている。
ジュースの自動販売機のそばにリボンをつけられたままの「元プレゼント」が落ちている。
もしかするとその中には「希望」がラッピングされているのかもしれないなあ。

オーケー。ボーイズ。
今年もオレ達は誰も地雷を踏まなかった。
 オーケー。ガールズ。
今年もオレ達は地震もハリケーンも空爆もクリアした。
オメデトウ。
オレ達はその「強運」を迷うことなく信じて
地雷が埋まっていないストリートを歩いていく。
行き先はあまりよくわかっていないのだが。

今後もカオルをよろしくお願いします。
よいお年にすればいいじゃん。
   
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