新・最後のアジト




<< liblaryトップに戻る
新・最後のアジトact.24 「ニオイ付きの着メロにプロクルステスの刃を」 

2006 2/6月曜日。今夜は雪になるらしいな。確かにそんなカンジの天気だ。
「寒い」というよりも「冷たい」だ。涙も凍るんじゃないのか。
カオルは寒いのが嫌いだ。機能が停止するからだ。
冬の頼りない陽だまりをかき集めてテロ〜ンとしているのは悪くないのだが
「オレってすげーナマケモノじゃん」と軽く自己嫌悪になったりもする。
「職業はカオル」を貫き通すのもなかなか大変だ。

先日なんかの約束を果たしに横浜へ行く時乗った電車の中で
「携帯電話とスイカが合体するらしい」ようなポスターを見た。
ふうむ。進化というか合理的というか機械的な世の中になってきた。
売店のおねいさんと手が触れるが楽しみでガムを買っている人達はかわいそーだ。
なんでもモバイルで「ピッ」だ。携帯なくしちゃったら大変だな。
どーでもいいコトなんだけど「留守電のお姉さんの声に惚れるヒト」っているのかな。
とにかく「恋もデジタル」なんてややこしい時代にならなければよいな。

そんなに科学がすごいのならば「夢を録画できる機械」とか
「ネコと会話できるマシーン」とか制作できないのだろうか。
少なくともカオルは喜ぶぞ。手頃なお値段なら(2980円ぐらい?)是非入手したい。
ネコと話せたら嬉しいし毎晩のようにカオルは奇妙な夢を見るから。

それにしても寒いな。手が冷たい。キーボードを叩くリズムがノロノロだ。

ロシアの話だったかな。「強盗プロクルステス」別名「ひきのばす男」って話があったな。
プロクルステス旅人を捕まえるとベッドに寝かせる。
旅人の背丈が短いと引伸してベットのサイズに合わせる。
逆に長いとベッドからはみ出た部分をちょきんと切る。
「プロクルステスの寝台」の語源は「容赦ない強制や杓子定規」を意味するらしい。
マニュアルどおり。とにかくその「サイズ」に合わないものはちょん切るかひきのばす。
「ああ。その携帯電話ではダメですね。規格にあってないので」
「え。現金ですか?あの当店はカードだけしか取り扱っていないのです」
「申し訳ございません。その『古いタイプ』は私どもでは対応できませんので」

例えば「ポケットのコインがぶつかるリズムで夕暮れの街を黄昏て歩く」なんてフレーズも
「は?」なんてカンジで「リアル」じゃない時代が来ちゃうのだろうか。
「は?小銭?イマドキ誰もそんなの持ち歩いてないっすよ」
 〜 コートの中でモバイルが小刻みに泣いてる あの娘からのサヨナラのメール 〜
うむう。ゲロゲロだな。
誠にもって遺憾だ。こんなの詩じゃねーな。最近の流行歌のようにダサい。

コピー&ペースト」とはカオルにとってすごく便利な機能である。
カオルは字がヘタクソなのでパソコンで書いたほうが絶対に読みやすい。
「行」や「フレーズ」を入れ替えたりまた元に戻したりも簡単にやれる。
昔の小説家とかは大変だっただろう。だって原稿用紙に書いてたんだろ。
間違えたら最初から書き直したりな。こういう時は「デジタルは楽チンでいいな」と想う。

もしテレビや着メロや車内広告から「ニオイも体感できる機械」なんか発明されたら
オモシロイと想うが
満員電車の中なんかはすごいことになりそうだ。
あ。でもきっとマニュアルができるのかな。
「車内ではニオイモードは御遠慮下さい」とかな。
「ありえねー」と言切れるか?

とにかくチンピラ詩人にとってささやかな救いは
「まだPCには詩が書けない」というコトである。

あ。もしかしたらカオルが知らないだけで「詩が書ける機械」なんてあるのかな。
おおカミよ。仏よ。
デジタルにも神は宿るのでしょうか?

おしまい。
   
  act.25へ→