新・最後のアジト




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新・最後のアジトact.36 「センター街でマサル君はスイカ割りを」

オレはプールが大好きだけれど泳ぐのは非常にヘタクソだ。
クロールなんかしている姿を見たら溺れていると思われるだろう。
ウキワもウワキも好きだ。だからそういう相手と浮輪につかまってプールにいるのは楽しい。

今年は自主的に「夏休み」をとったのだが。プールにも2度行ったのだが。
なんだか全然ピンと来ない。
まあ当たり前か。「定職・拘束時間・決まったサイクル」がないからな。
それに日記や原稿を書いたりライブのことを考えたりしてしまうのでただの「日常」じゃ。
アイスも密会も朝寝坊も日課だしな。
すでに「夏休みは終わっている」気分だ。

まだ世界が20世紀の頃夏の終わりに小学校の側をうなだれて歩いていた。
熱で柔らかくなったアスファルトに紙のカードが落ちている。反射的に本能的に拾って眺めた。
「夏休みラジオ体操の出席者にはスタンプ」のカードだ。
その仮名マサル君のカードは初日から途切れずに「8/29」まで押してある。
アト2日でパーフェクトではないか。それなのに紛失してしまったのか。
明日の朝キミはあわてふためき泣くのだろう。キミは「そういう人生」を送るのだろうか。
あまりにも可哀想なので小学校のポストにスタンプカードを放り込んでおいた。
マサルよ。
オレが「いいヒトの日」でよかったな。
もし「悪いヒトの日」だったら。
オレは「スタンプを修正液で白くして」ポストに放り込んだだろう。
さらに「ガッツがあって悪いヒトの日」だったら
コンピューターなどが得意な手下に「真っ白の偽造カード」を制作させただろう。

あ。
オレは「スイカに塩」というのが猛烈に嫌いだ。
スイカ自体もそんなに好きではない。タネがめんどうくさいのだ。
「スイカ割り」にも燃えたことはない。
「右。もちょっと。あ。行き過ぎ。左ひだり!。そこ。いま!」
とかさわいじゃってバカじゃねーの。
目隠ししてグルグル回すなよ。
どうせなら渋谷センター街で「コギャル割り」とかすりゃいいじゃんか。
酔っぱらって変なクスリ飲んでふらふらでよ。
濃いサングラスでさ。真夜中にさ。

あの「グシャリと割れたスイカ」ってなんかすげー不味いんだよな。

沖縄に行きたい。
あの海は特別なんだ。
ふむ。
9月のライブが終わったら改めて夏休みをとるか。

オレはな。
「金魚すくい」を「金魚救い」だと思っていたんだよ。
助けようと大量の小銭を巻き上げられたぞ。

カオルは風鈴を部屋の中に取り付けている。
扇風機の風でチリーンと鳴るように。

おしまい。
   
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