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新・最後のアジトact.37 「どしゃ降りのトレインにキセル乗車のスローダンスを」
電車から降りるとどしゃ降りだった。
オレは傘が好きじゃないし目的地は駅からすぐだったので雨の中を歩いた。
改札口付近には「濡れたくない人達」がたくさん雨宿りをしていた。
携帯で電話をしているヒトも多い。遅刻を詫びるか「迎えにきて」だろう。
以前から想っていたのだがなぜ駅に「ご自由にお持ちください傘サービス」がないのだろう。
電車の忘れ物で傘はすごく多いらしくてその処分に困っていると。
どっか適当な場所にポリバケツにでも傘を突っ込んどきゃいいんじゃねえのかなあと。
客も喜ぶし「処分」もできるし。
でもな。これぐらいのことはホワイトカラーの偉いヒトは考えてるよな。
だからきっと「理由」があるんだろうな。
「傘はお客様の『紛失物』ですから。取り来られるかもしれませんから」
って「ビニール傘」なんて取りに来ねーよ。
割れた「スイカ」も「500円返金」してくれるのだろうか?
「スイカ」とは「スイスイカード」の略なのだろうか?
いつの日か「ポイント・マイレージ」みたいのが貯まるようになればいいのに。
それにしても駅員さんとはとてもストレスのたまる仕事だと想う。
ゲロの掃除とか。酔っぱらいに絡まれたり。
1分の誤差も許されずに駅に到着しなくては行けないし。
うむ。オレには絶対に出来ないな。
以前「関東圏外」から電車に乗り切符を落としたことがある。
そんで「日本人じゃないフリ」をして
でたらめに「ハムカントン。チムサッチョ。バーザーガー」とか言ってたら
「もう行っていいよ」ってカンジで「しっし」とされた。
香港でも同じコトをしたことがある。そのとき喋ったのは日本語だけど。
「私はにっぽんからやってきたカオルというロッカーです。
本日は子供用の切符で乗車しました。しかも初乗り料金です。
わたしはお金もありませんし悩んでいることもたくさんあります。
本日は大変天気もよいです。あなたのことは一生忘れないのでこれでいい?」
そんなでたらめを早口でまくしたてると「しっし」とされた。
昔々まだ自動改札がなかった頃。
カオルはほとんど「一番安い切符」で電車に乗っていた。
千葉へ行くにも渋谷に行くのも。
何気ない顔をして人込みに紛れてごしょっと切符を裏にして投げるのである。
捕まったことはない。
駅員さんは切符ではなく「顔」を見ているらしいのだ。
監視カメラなんてモノもなかったしな。
今夜は満月だった。
自転車から眺めた。
いくら走っても月は追い越せなかった。
おしまい。
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