バラッドキング日記




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  「バラッドキング日記 その4」
   
今回は「レコーディーング2日目」を書こうと想うのだが
すでに「当時の記憶」がバラバラになっている。
たぶんプロデューサーも覚えていないから「あらすじを適当マシーン」で。
 
2日目はギターのこーじに日帰りできてもらった。
「雲をつかむような話」という長い朗読の曲は
2004年の冬頃のスマトラ沖地震のニュースを見てつくった。
様々なメンバーといろいろなコトをやった。
どれも素晴らしかったけどオレは日々「効果音が欲しい」と想っていた。
レコーディーング前のリハでこーじとつくった効果音を
こーじに操作してもらい塚本プロデューサーに聴いてもらった。
塚本は即決した。
「ねえ。こーじ。7月の前半て何してる?」
「こーじ。この効果音操作は完全に楽器だよ。
 それとジャスミンはオレ弾けないしさ」
こーじ日帰り強制連行決定。
 
デジタルを駆使すれば簡単だ。
カオルが弾き語りそのあとに「効果音」を録音して
好みの場所に好みの音質で「コピー&ペースト」した方が「お得」だが
またもやオレたちは「同時録音」にこだわった。
最初に「波の音」を流すのだがオレはその「効果音の世界」に入る。浸る。
その音がないと気分が盛り上がらない。
ふたりで探してつくった「その波の音」じゃないとダメだ。
オレが朗読を始めるとこーじがすーっとボリュームを下げる。
オレが荒れると効果音も荒れて海も荒れる。
そういう「意味」を塚本プロデューサーは「楽器」と判断した。
わざわざ安物のラジカセにマイクを立てて効果音を録った。
もちろんそんなコトをしなくてもあとで「ラジカセ風音質」に
デジタルマシーンなら楽勝なんだけど「気分の問題」でね。
 
いいテイクが録れた。
2番のところは「無茶苦茶な拍子」になっている。
わざとじゃなくてそうなっちゃったんだ。
自然な不自然。
 
そのあと「しみったれワルツ」を録った気がする。
最初は塚本がギターを弾く予定だったのだけれど
プロデューサーいわく「いらない気がする」でピアノ弾き語りになった。
この曲だけオレはピアノを先に録った。クリックを聴きながら。
「コーラスを自分でしたい」というのがあってあまり揺れたくなかった。
元々「塚本ギター」にリズムを頼っていたこともあってクリックを聴いた。
結果的によい感じですんなり録れた。
コーラスを重ねていくのも愉しかった。
 
そして前日なかなか納得できなかった「チェイン」と「相棒」を再々トライ。
聴き直さずに(疲れるから)とりあえず保存。
 
最後に「ジャスミン」。
これがふたつの原因で10テイク以上録ることになってしまった。
こーじのギターと唄を同時録音したのだが
こーじが「同時録音の魔物」に取り憑かれてしまった。
普段ライブだといろんな音が聴こえるのだが
レコーディングはヘッドフォンでやる。
すると「自分の音だけがすごくクリア」に聴こえる。
ライブでは気にならないようなささやかな音も気になる。
そして「オレってこんなにヘタだっけ?」という魔物が襲ってくる。
さらに「何度もカオルに唄わせると声が枯れる」という焦りもある。
 
石毛マネージャーが「ボクはあまり録音のことはわからないんです。
 みなさんが何を気にしているかもあまりわからなくて」と言った。
オレはこう答えた。
「石毛さんは自分の声が録音されたものを
 自分で聴くとどんなカンジですか?」
「なんだか気持ち悪いですね。嫌いですよ。
 自分の普段聴いてる声と違うでしょ」
「石毛さん。オレたちも同じなんです。素っ裸にされた気分なんです」
そう言うと石毛さんは「すごくよくわかった」と。
 
こーじも開き直っていい感じなってきたのだが
今度は「変なノイズ」が録音されている。
原因が分からなかったが「たぶんカオルのマイクが湿度でアウト」だった。
レコーディングに使用するコンデンサーマイクというのはとにかく「湿気」に弱い。
オレの汗やジャスミンはすごくマイクに近づいて唄ったので
たぶんツバとかの影響もある。
深夜2時近くなりカオルの声も完全にかすれている。
でも塚本プロデューサーは前世が鬼だから
「カオル。こーじもいいカンジだからそのしょぼい声で録ろうよ」と言う。
鬼には逆らえない。
「いいけど。唄い方の解釈をがらりと変えてみるよ」
結果的にマイクの交換後のしゃがれ声ラストテイクがオッケーになった。
 
宿代がギリギリのオレたちはこーじたちに帰ってもらった。すまん。
 
そして宿に戻りシェフ塚本と石毛さんがまた飲み始める。
オレも石毛さんと「人生とか」を語ったりする。いい時間だ。(good time)
しかし。
料理を作り終えたプロデューサーが迷い始める。
予定では次の日にベースの三輪ちゃんと
ドラムのこーきに来てもらうはずだった。
「カオル。ちょっと迷ってる。
 このアルバムは完全に弾き語りの方がいいのではないか?」
プロデューサーは夜中の3時といういい時間に(too late time)
三輪ちゃんとこーきに「絶対寝てるよなー」とか言いながら電話。
「あのさ。ちょっと明日来るのをいったん保留にして待っててくれる?」
オレがこーきだったら伊豆方面にテポドン100号を発射しただろう。
 
ふたりで「録音表(薫風丸福袋で誰かにあげた)」を眺めながら
明日の方針などを相談。
とにかく明日いちばんで耳が元気な状態で
どれがオッケーでどれが保留か整理しようということになった。
 
結局次の昼ぐらいに「オレはリンダと祭りはやっぱバンドがいい」と言って
プロデューサーが「やっぱいまから来て。夜10時ぐらいまでに」と電話。
オレが三輪ちゃんだったら伊豆方面にトマホーク99号を連射しただろう。
 
次回は「3日目」を書く予定だが
ワンマンまでに「最終章」までいけるのか。カオルよ。
 
続く。
   
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