バラッドキング日記




<< liblaryトップに戻る
   
  「バラッドキング日記 その6」
   
5日目。
宿を掃除してスタジオへ。
機材を片付けて東京へ。
途中で飯を食いながら経費の精算や
「今後のこと。ミックスダウン。マスタリング」のことについて話した。
 
最終的にオレの前2作「詩人〜」「誰ハロ」をやってくれた石川さんに頼もうと。
すぐに石川さんに電話をして「格安で了解」を頂いた。
だいたいのスケジュールを決めてこんなカンジでやっていこうと。
 
数日後に塚本のところに「かっぱちゃんのラフミックス」が届いた。
オレもすぐに聴かせてもらったのだが「すごくいい」のだ。
当日録った分を絶対に渡さないかっぱちゃんがラフミックスなんて
まったくの想定外だった。
しかもデキが素晴らしい。
細部で少し直したいと想う箇所もあったけどある意味「これで完成」だった。
 
さて困った。
石川さんにすでに発注している。
「ミックスはできたからマスタリングだけお願いします」とも言えるのだが。
 
ミックスダウンというのは
「録った唄や楽器のバランスや音像やリバーブをかけたり
 細かい調整やフェードアウトという最後の仕上げ」だ。
録った音が「よい」というのが前提だけれど
この行程ですべてが決まると言っても過言ではない。
 
マスタリングというのは
「各曲の音量バランスを揃えたり 曲順どおりにならべ
 曲と曲の間の秒数をきめたり プレス用の処理」などの最終行程。
マスタリングについてはオレたちバンドマンも意外とよくわかっていなくて
意思の疎通がスムーズではないエンジニアだと
「全体の音質ががらりと変わる」場合もある。
 
オレたちは石川さんと逢って「かっぱちゃんミックス」をいっしょに聴いた。
そして「細かい要望」を石川さんにして
「40%ぐらいひとりで仕上げてくる。
 そのあとカオルと塚本さんに立ち会ってもらって80%ぐらいまで」
そんな風にして石川さんに託した。
 
出来上がってきたものは素晴らしいものだった。
1曲ごとに石川さんの「曲に対するちゃんとした解釈」が反映されていた。
しかし。
オレたちは何度もいろんな再生機械で聴いたけれど
先入観もあり「かっぱちゃんミックスの方がいい」と想った。
こーじにも聴き比べてもらったが3人の意見は同じだった。
もちろん石川ミックスの方がいいとろこもたくさんあったのだけれど。
極論を言えば「弾き語りはかっぱ。バンドサウンドは石川」というカンジ。
やはり誰にでも得意不得意はある。
 
オレたちは迷ったけれど石川さんに「かなり無謀なお願い」をした。
それは石川さんのプライドを傷つけるような乱暴なことだったし
「1度組上げた足場をぜんぶバラしてまたゼロから」ということだから。
でもオレたちは「妥協」というのができなかった。
 
「塚本。もう1度石川さんにやってもらおう。
 それでダメだったら伊豆へ行こう」
オレたちはじっと待った。
 
しばらくして石川さんの「再ミックス」が届いた。
3人とも喜んだ。すごくよくなっている。
待ってよかった。
 
石川さんにとっては本当にきつい作業だったと想う。
オレたちの意向もわかるけれど自分の趣味やセンスも反映させたい。
「誰がやっても同じ」なんてオレたちも嫌だし。
そして「録音に立ち会っていない」というハンディもある。
録音したエンジニアがミックスまでやると決まっていれば
エンジニアは録りながら頭の中で「ミックスのイメージ」ができる。
だから「最初から不利な戦い」だったのだ石川さんは「オトコ」だった。
 
塚本と石川さんと細部を少しだけいじって
曲間を決めて「マスタリングやめようぜ」となった。
デジタルガすごいから曲間も「0秒00以下」を選べるけど
オレたちは「ゼロか1か2秒」でやった。
 
完成した。
 
塚本が後に言っていた。
「今回のレコーディングはすごかった。
 自分の人生の体験としても大きな意味がある。
 全員ががんばたったし誰がいなくてもダメだったし
 逆に他の誰かがいたらダメだっただろう」
 
オレも同感だった。
「山が動いた」気分だった。
 
次回は「ジャケットやその他」について最終章としよう。
   
  topへ↑