横浜坊主




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横浜坊主 その15 「身代金は幾らぐらいにしようかなあ」の巻

ある日曜日の昼下がりパソコンの部品を買いに横浜へ 行った。
ビックカメラのポイントカードを持っているのだが
閑人・バカップル・家族サービスをかき分けて歩くのが嫌でいちばん近いヨドバシへ。
部品が見当たらず店員に訊く。
「部品はありますか?」
「その部品でしたらヨドバシ別 館になります」
「別館はどこですか?」
「橋の所のビッグカメラの向かいです」
「.....ありがと」
ストリートと同じくビックカメラの店内も混んでいる。
目当ての部品を比較検討したいのだがそのコーナー前には
大きな紙袋を下げたお母様が2匹なにやら話し込んでいる。
その周りにはお坊ちゃまが3匹。
それぞれ風船や変身するときに使用する装置や悪と戦うための棒状の武器を振り上げ
「○○チェーンジ!」「ビームフラーッシュ!!」
などと叫びながら走り回っている。
その日オレはサングラスをかけていたので悪の一味と勘違いされ攻撃されるかもしれないと思ったが
大至急その部品を手に入れる必要があったので勇気をふりしぼり商品陳列棚に近づく。
多少の犠牲は覚悟していたが 幸いサンダル履きの足を踏まれ顔や背中を数ヶ所殴られただけで済んだ。
それを見てしつけにキビシイお母様A(茶髪)がお子様a(茶髪)をすかさず叱りつける。
「ダメでしょータッくん。気をつけて遊ばないと」
どうやらオレが2日ほどアジトから出ずゴロゴロしている間に世界から謝罪という風習は消えてしまったらしい。
まったく世間知らずの自分が嫌になる。
「すいませんがちょっとそこの部品が見たいのですが」
すると大事なお話し中にもかかわらずお母様B(金髪)は
お子様b(パーマ)の手を引きながら一歩だけ移動してくれた。
オレは頭をヘコヘコ下げながら手早く部品を選ぶ。
なーにどれだって大差ないさ。金もないし安いのでいいや。
レジへ向おうとするとお子様c(ベッカム髪)がじっとこちらを見ている。
その部品が気になるようだ。試しに手招きすると駆け寄ってくる。
「坊やはゲームは好きかい?お兄ちゃんの秘密基地にはいっぱいあるんだぜ。ケケケケ。いく?」
するとcはあっさりうなずく。
身代金は幾らぐらいにしようかなあと思案してみたが我がアジトにはネコが6匹もいるし
あのお母様はきっと値切るだろうなあと思ったらめんどくさくなり誘拐はあきらめた。
   
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