誰ハロサブストーリー




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「メリーゴーラウンドの場合」
   
メリーゴーラウンド。もちろん本名ではない。
本名はとてもダサい。たとえば「山田一」のように。
全て直線の線対称の趣味が切手集めの防火責任者のような名前。
「結婚詐欺師・ペテン師」のイメージとはあまりにも違うのでカオルが適当につけた。

彼の身長は180cm以上。スラッと痩せていていつもいいニオイがしていた。
2枚目というより3枚目の顔つきなのだが
「秘密やグチを聞いてくれそう」なムードを持っていた。
笑顔の種類もたぶん20パターンぐらい用意していて使い分けていた。

彼はいつも違う女性を連れて歩いていた。
その女性達は「美人」というより
「影のあるシャイで高貴」なかんじのタイプばかり。
メリーゴーラウンドはいつもセンスのよい服を着ていた。
高価そうなアクセサリーや時計を付けていた。
恐らくその女性達に買ってもらったのだと思う。
彼女達はメリーゴーラウンドに「何かを買ってあげる」ことで
自分たちを「癒している」ようだった。

一度モテる秘訣を聞いたことがある。
「企業秘密。ふふ。」
ホストになれば?といったことがあるが
「ひとりでやった方が全然儲かる。それにオレ酒飲めないし。
 セックスも基本的には嫌いだしな。仕事だよ。」
メリーゴーラウンドなりの美学を持っていて
「貯金の70%」をつかわせた時点でバイバイらしい。
当たり前の話だが彼は絶対に自分の家を教えなかった。

そんな彼がある日カオルにこういった。
「カオル〜。オレ恋しちゃったよ。20歳の女子大生。
 マジで結婚考えてる。他の女とは全て別れた。
 パーティやるからなんかピアノで唄ってくれよ。ギャラはずむぜ。」
確かにその娘は清楚でキュートな娘だった。
そして彼らは秘密を分け合い彼のアパートで半同棲が始った。

しかしメリーゴーラウンドは根っからの女好き。
やはり浮気をはじめる。そして現場をその娘に見つかる。
役人のお嬢様で金を持っていた彼女は私立探偵を雇っていたのだ。
彼女にとっては初めての相手。逆上して告訴された。
普通なら執行猶予つきの簡単な裁判ですむらしいのだが
彼女の父親が「検察庁」の関係の人で実刑になってしまった。

そして数ヶ月の服役のあと出所。
その数日後連絡があった。
待ち合わせの場所にメリーゴーラウンドは先に着いていた。
ものすごく痩せていてだらしない無精ヒゲ。
服はジャージで髪の毛はボサボサ。
「金を貸してくれ。5000円でいい。」
恐らく数百万あった貯金はすべて慰謝料になったらしい。

刑務所内のイジメの話を聞いた。
それは凄まじかった。カオルは書きたくない。
雑居房内には不思議なヒエラルキーがあり
「殺人・銀行強盗」など野蛮な行為が「偉い」とされ
「女たらし・強姦・盜撮」などはいちばんバカにされる罪らしい。
彼はイジメに耐えかね自ら「独房入り」を志願したらしい。

オレは1万円あげた。
その頃のカオルは作詩で少し儲けていてひとりバブルだった。
その金は田舎に帰る電車賃にするらしい。
それっきりだ。

「セックス嫌いで下戸のプロのヒモ」
メリーゴーラウンド。
光と影の物語。

おしまい。
   
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