Down Road
レコーディング日記




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  レコーディング日記2
   

サイトウヒロシプロデューサー(以降ヒロP)と
横浜で打ち合わせをした時に収録曲は10曲なかった気がする。
アルバムのトータルコンセプトのようなものはなくて
「ヒロPが買ってくれたカオル専用ピアノ1台で録ろう」だけだった。
(実際はオレがギターを弾いたりもしているが)
曲は新曲と過去にライブテイクなどで発表した音源で
「どうしても録り直したい楽曲」を中心に選んだ。

録音の日が2日間。
TDとマスタリングが1日。
(トラックダウン。ミックスダウンとも呼ぶ。
 録音した音を化粧してバランスをとる作業。
 マスタリングは全曲のバランスをとったり
 曲間の秒数などを決める最終的作業)
弾き語りとはいえかなりタイトなスケジュールだ。

8/5初日。
カオルはライブの翌日だったがすごくハイな気分だった。
だけれどストレスもある。
初日に6曲はオッケーテイクを録りたい。
初日にこけるとヤバい。

ヒロPは「レコーディング必須アイテム」を完璧に揃えた。
食事や飲み物。冷たいのもポットで熱いものも飲める。
飴やチョコレートや歌詞カードなど。
オレたちはワクワクしていた。

どの曲を録音したのか覚えていないけれど
「特別な日」と「 swing 」はすごくいいモノが録れた。
特別な日は唄とピアノを同時録音したので
「エレピの鍵盤を爪でカツカツする音」が
唄のマイクにかぶっている。

結局はボツになったのだが勢いで新曲も録った。
また「21世紀狂詩曲」と「遊び心」に
ギタリストとベーシストを起用したのだが
最終的にはほとんど弾き語りのテイクになった。
これも録り直しになるのだが
「詩人は夜明けにガム」と「アシタのアタシ」の
カオルギターも録音した。

オレもヒロPも異常な集中力で
特にオレは「あれもやりたいこれもやりたい」というカンジで
エンジニア青木の食事のコトも完全に忘れていた。

最終的によいものがたくさん録れたので
(予定時間はオーバーしたが)
CDRにしてもらい終了。
だけど興奮醒めやらぬカオルとヒロPは
偶然その場に居合わせた若きロックバンド「或るミイ田中」を拉致。
またボーカルの石橋も電話で呼び出し。
田中の焼き肉にメロンソーダというセンスにオレは異議申し立て。

千葉県民はご存知の通りヒロシプロデューサーの体力は強靭だ。
きっとビールがヒロPの滋養強壮剤なのだろう。
オレはノンアルコールビールが滋養強壮剤だ。
ヒロPは「耳がいい」だ。
それは聴覚がいいや感度がいいとは少し違う。
「長い間まともなロック音楽を聴き込んだ耳」だ。
ジャッジメントも的確でダメはダメと判断が早い。

深夜ホテルに戻ったのだが
オレは結局徹夜で下北沢に向かった。
まだ脳が興奮していて深夜映画の演技に
ノンアルコールビールを飲みながらダメ出しなんぞをしていた。
そう。
オレは金子マリさんに「コーラスやってくれ〜。格安で」と依頼していたのだ。
今日撮った音をマリさんに聴いてもらってミーティングだ。

しかし。
下北沢へむかう車中カオルは猛暑なのに凍えてきた。
通常でもお粗末なカオル男性器がすごく縮小している。
「ちょっと待てよ。これからマリさん家にいく。
 そんでだ。マリさんといっしょにこれを聴くんだ。
 たぶんデカいスピーカーでデカいソファーで並んで聴くんだ。
 ちょっと待てよ。確かにオレはいいモノが録音できた。
 じゃがな。相手は天下の金子マリだ。
 10代で清志郎さんなんかのコーラスもやったヒトだ。
 ヤバい。リズムや音程が悪いと殴られないだろうか。
 下北沢のジャニスジョップリンと呼ばれたヒトだ。(カオル注下記)
 こんな曲にコーラスなんぞやれないと言われてしまうのでは。
 うががが。しかし船はすでに出てしまった。
 わかった。玉砕覚悟でいざシモキタへ!」

驚愕の次号を待て!!

つづく

 
 

注:マリさんは下北沢のジャニスジョップリンと呼ばれるのは本意ではないと。
  でも甘んじて受け入れる。
  それは声質とか音楽的影響ではなく
  「彼女は1960年代に女性の権利を
   高らかに叫んだ先駆者であるから」と。

 この情報はウィキペディアなどにも載っているぞ。

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