まっしぐら




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「15円あるにはあるんだけど」の巻 2000.5.15

「マック」という言葉を聞くとオレは迷わずハンバーガーやポテトを連想してしまう。
インターネットやメールなど無縁のアナログ生活。 CGやホームページなんて夢のまた夢。
ゲームとワープロぐらいしか出来ない。マウス がうまく転がせない。
我ながら非常に情けない。バンドの音源もCDRやMDが増えてきたし
「今度メールを送 るんでアドレスを・・・」なんて当たり前のように言われる。
送れるもんなら送ってみろ。受話器から文字がこぼれてきたりしてな。
「鬱」なんて 字は床に落ちてバラバラに割れたら読めねーだろうな。
6年位前からオレは作詞家の仕事を始めたんだけどその当時はFAXも持ってなかった。
いちいちコンピニまでFAXしにダッシュしてた。 走る作詩家。確実に情けないと思う。
携帯電話も3年前にやっと買った。光るアンテナに換えた。
でもベルズは地下だから 電波が届かない。車内では他のお客様の御迷惑になるので
電源を切ってしまう。あまり意味がない。目覚まし時計としてはまあ活躍しているが。
確か15年前オレが21歳の時だ。もちろん誰も携帯なんて持ってなかった時代だ。
援助交際もマツモトキヨシも多分なかったと思う。
その頃オレと相棒のヒサカタ君はとてもビンボーだった。
そしていつもハラペコだっ た。ある日バンドで練習をしてスタジオ代を払った。
ジュースを飲んでタバコを買ったらスッカラカンになった。今でも覚えてる。
ふたりの所持金は合わせて23円。オレが8円。ヒサカタが15円。
誰かに電話して飯を食わせてもらおうと思った。
手帳を見てそのワガママを聞いてく れそうな仲間を探した。チャンスは一度。3分間。
公衆電話の前に車を止めた。突然ポケットを探るヒサカタの顔が歪んだ。
「15円ある にはあるんだけど五円玉3枚なんだ。十円玉はない。」
もちろん五円玉で電話は掛けられない。深夜の国道2号線。揺れる街灯。
途方に暮れるという言葉を始めて体感した少年がふたり。時は流れた。
あと半年で21世紀。やはりパソコンを買わなくちゃなのだろうか。
   
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