まっしぐら




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「例えば春を売ると」の巻

ふと想う。「寂しがり屋」という商売が成り立たないものだろうかと。
学歴も資本もないオレ様だが寂しがることだけは得意としている。
日々ハードなトレーニングと研究を重ねさっきも最新式のやり方で寂しがっていた所だ。
確定申告用紙の職業欄に「寂しがり屋(一級)」などと
記入している場面を思い描きながら。世間の素人寂しがり屋さん達は出逢い系サイトで
大金を使いホテルで 濡れたり流行りの神様を買い漁ってみたりコンビニの前で
ゆがんだ円陣を組んだりでその才能を活かしていない。寂しい限りだ。
ではプロになるためには何が必要なのだろう。
まず商売というからには商品がなくてはならない。プロ野球選手のホームランのように。
文房具屋の消しゴムのように。ソープ嬢の秘技のように。
大前提として扱う商品は法律に触れないもの。
もし逮捕されて独房にぶち込まれたらとても寂しい。
電波もピザも届かない狭い場所でひとりぼっちなんてオレ様には耐えられない。
ニヤニヤ笑いながらガムを噛む看守達の拷問も恐ろしい。運良く脱獄できたとしても
外は人食いザメが泳ぎ回る嵐の海。大ピンチ。
こんな事態だけは絶対に避けなければなるまい。
例えば春を売ると売春行為になり処罰されるらしいので寂しがり屋らしく
秋を売るというのはどうだろうか。売秋。バイシュー。
カタカナにするとナイキのニューモデルやプレステ2のゲ格闘ームみたいな感じだ。
そのCMは実写では再現不可能の大迫力CG。ナレーションはちょっと舌足らずの少年。
「誰にでも一度は輝く瞬間がある。
 次世代型バーチャルアクションロールプレイングゲーム。ザ・バイシュー。」
うんいい。いいとは思うけど確かバイシューは格闘ゲームじゃなかったっけ。
まあいいか。
オレ様は「セックス・ドラクエ・ロックンロール」を信条とするチンピラなのだから。
しかし主力商品がゲームではオモチャ屋や中古ソフト屋と変わらない。
オリジナリティあふれるベンチャー企業「寂しがり屋」の仕事ではない。
やはり商品はバイシューだ。
靴でもゲームでもなく「寂しがり屋」でしか売ってないバイシュー。
最近巷で話題沸騰中のバイシュー。お値段は一回3980円。消費税は頂きません。
早朝割引あり。オープニングセール期間中はもれなく豪華記念品プレゼント。
あなたも今すぐゲット!こんなナイスな広告を載せるには
どんなタイプの雑誌がいいのだろうか。
「寂しがり屋」を必要とする人々が好んで読む雑誌。
巻末に「寝相占い」のコーナーがあり在日宇宙人向けの求人情報が充実しているような
雑誌。あとで本屋に行って探してみよう。さあ忙しくなるぞ。うん?でもさ。
もしもバイシューがヒットして大繁盛したら沢山の人が訪れることになるな。
そしたらもう寂しくないぞ。「寂しがり屋」じゃなくなる。光速で失業か。マズい。
うーんどうしよう。
とりあえずこれぐらい在庫あれば足りるからバイシューのスイッチ切っとこう。ピピッ。
   
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