まっしぐら




<< liblaryトップに戻る
雪だるまを中心とした集合写真」の巻 2002.4.27.

筋肉通。これは「筋肉痛」の変換ミスではない。
筋肉関係の通〔ツウ)の人のことだ。耳慣れない方も多いと思うが当たり前だ。
15分ぐらい前にオレが発明した言葉だからだ。恥じることはない。
恥ずべきは外務官僚はじめ生臭役人共だ。とにかくその筋肉通という男と
1時間ほどふたりだけで食事をするという状況になってしまった。
以下はその時の会話を記録したものである。
より楽しく読んでいただくために筋肉通(以後 筋。)のプロフィールを
簡単に紹介する。ちなみにこのコラムのファンの方は知っていると思うが
以前「一休」と呼ばれるクソ生意気なガキの話を書いたが
(コラム「銅はオヤジギャグだ」の巻をお読み下さい。)筋。はそいつの父親だ。
筋。は33歳。出版社勤務。髪は短く肌は不自然に黒い。歯はとても白い。
趣味はボディビルとバーベキュー。家族構成は 不自然に肌の黒い奥さんと
生意気なガキと読みづらい名前の小さな女の子の4人だ。 2年前に 千葉県に家を買った。
小さな庭は奥さん自慢のガーデニングで飾られブランコとパラソル付きの白いテーブルと
タフなトレーニング機材が寄り添って並んでいる。
実際に訪問したわけではないがまるっきりの想像でもない。
新居の写真をアルバム一冊見せられたので(ふう。)覚えてしまったのだ。

会談の場所は都内 某ファミリーレストラン。時間は午前10時。
ちなみにオレが到着した時には既に禁煙席が(嗚々。)予約されていた。
オレはコーヒーそして筋。は果汁100%のジュースと
サラダ とホット ケーキのようなものを注文した。
筋。「お久しぶり。どぉーですかッ。お仕事の方は。忙しぃーですか。あれ?
なんかカオルくん疲れてるみたいだネ。顔色悪いよ。」
薫。「ああ。昨日あんま寝てないんだ。
(てゆうかまだ10時だぞ。それにお前のそのポロシャツと歯。白すぎて目いてぇ。)」
筋。「なんだ元気ないんだ。久しぶりなのに残念だネ。
あっコレ見ればきっ と元気に なるよ。
ニュゥーハウスで撮ったマァイファミリーズベストショッツ。はい。」
薫。(うっ。確かにそう書いてあるな。4人のサインも、、あるしな。)
しかたなくアルバムを開く薫。満面に笑を浮かべ薫の反応をうかがう筋。
思わず薫は煙草をくわえるがここは禁煙席だし体に悪いと筋。に注意される。
アルバムは表札を取り付けるシーンから始まる。
それなりのスピードでページをめくり庭での花火シーンのあたりで
そろそろなんかコメントしなきゃなと薫は思う。
その時薫の気持ちを察したようにウエイトレスが注文の品を運んでくる。
「御注文の品は以上でおそろいですか?」 筋。「ウン。完璧です。」
「それではごゆっくりどうぞ。」 筋。「ウン。そうさせてもらうよ。ありがとう。」
何モンだアンタ。ここはタヒチのシェラトンじゃねーぞ。と思いつつも
チャンスとばかりに一気にページをめくる。雪だるまを中心とした集合写真のところで
薫はやっと 口を開く。薫。「千葉って冬さみーの?」
筋。「寒いよ。海が近いから風が強いしね。
カオルくんみたいに不健康だとすぅぐに風邪引いちゃうよ。ははははは。
ねえカオルくん。 からだ鍛えてる?運動してる?」
薫。「あんまり。たまにセックスするぐらいかな。」
筋。「ねぇカオルくん、、、それは運動じゃなくて愛だよ。例えば水泳とかさ。」
薫。「、、、オレあのゴムの帽子大嫌いなんだ。」
筋。「ねえカオルくん。本気で体を鍛える気があるならさぁ
(おい。いつそんなこと言った?)ボクこう見え ても スポーツクラブ関係詳しいんだ。
(知ってるよ。お前筋肉通だもんな。)ねえ紹 介するよ。時間はかかると思うけどさ。
10ヶ月もしたらかなり筋肉付くよ。そしたらコーヒーだけじゃなくて
朝からガンガン食べられるよ。」薫は中途半端な笑顔を浮か べトイレに立つ。
高校時代以来はじめてトイレの個室で煙草を吸う。
でもそこは学校 の屋上ではないし煙も青くなくてトランジスタラジオからではなく
有線からインストのイエスタデイが流れていた。
薫。「でさ。本題の例の書類なんだけど。」筋。「あっアレね。もう済んだ。」
薫。「えっ。済んだ?どういうこと?」
筋。「来週中に自宅に書類が届くから中見ればわかるようにしてあるから。
ハンコ押して終り。」薫。「じゃ今日の打ち合わせ は?」
筋。「ウン。特にないよ。でもこういう機会でもないと会えないしさ。」
     
いつのまにか地雷原に迷い込んでしまった薫は爆死覚悟でノロノロと歩き出す。
薫。「今日もう時間 ないんだ。悪いけど帰るわ。」
筋。「えーそうなの残念だな。さっきトイレ行ってる 間にジム電話したらさ。
今からなら無料体験できるってさ。行かない?」
薫。「マジで時間 ねぇんだ。それに、、、
 (それにそんなことをしたら本当に死んでしまうかも知れない。)」
軽く右手を上げながら出口へ向かう薫。視線はさっきのウエイトレスを探している。
目が合ったら絶対にウインクしてやろうと誓う薫の背後から筋。の声。
「コー ヒー代忘れてるよ。」
2002年2月 カオル春を待たずに某ファミレスにて爆死。  
   
  topへ↑