その他/拳の振り上げ方を忘れてしまったバンドマンへ

「拳の振り上げ方を忘れてしまったバンドマンへ」 01.10.19

今回のコラムはとても長いものになった。BELLSのスペースだけでは収まらなかったので
CLUB24 と show boatに場所を提供していただいた。
〆切り直前にもかかわらずオレの強引な申し出を快諾してくれた大村氏台信氏には最大級の感謝を捧げる。
本当にありがとう。ひとつ借りが出来たな。
この文章はバンドマンカオルが若きバンドマンに送る個人的なメッセージである。
文章責任は当然カオルにあり上記両名およびベルズスタッフには一切ない。
世界は大変なことになっている。それでオレは非常に腹を立てている。
テロを起こしたヤツにも報復しているヤツにもだ。
しかしそれ以上にオレはバンドマンに対して怒っている。お前らどうしたんだ。今が吠える時だぞ。
こういう時にこそ唄があるんだろ。
普段ロクに働きもしないで変なカッコして夜中にジャカジャカやって人様に御迷惑をお掛けしている
そんな最低なオレ達ができる事が唄なんだよ。まともな人達が毎日働いてくれているおかげで
まぁ問題はあるにしても基本的に平和な日本だからバンドやれるんだろ。
アフガニスタンの子供は立ち食いそばも喰えないんだぞ。
ギターも買えないだろうしコンビニもゲームボーイも美味しいラーメン屋50店なんてグルメ本もない。
そんな子供達が腹を減らして倒れ爆弾落とされて将来の夢を語る前に死んじゃうんだぞ。ひでぇ話だよな。
そう思うだろ。じゃあなぜキミ達は自分なりの祈りとメッセージを込めた唄をつくらないんだ?
傷ついた人々を癒すメロディー。最悪の暴力を否定するリズム。自分の仲間と自由を守るためのグルーブ。
そういう事を今ちゃんと唄って立場を明確にしておかないとずる賢い悪いオトナにいいようにされちまうぞ。
佐野元春さんは事件の一週間後にはホームページでメッセージ付の新曲を発表していたぞ。
今のオレには国会でグチャグチャやってるアホやコンビニの前でツバ吐いてるガキ共を説得するほどの
エネルギーは残念ながらない。でもバンドマンであるお前らには言うぞ。言える。同じ穴のなんとかだからな。
9月11日のテロ事件のニュースは連日連夜メディアで報道されているので
オレ達はほぼ同程度の情報を持っていると認識している。いや同程度の情報しか持っていない。
だから「知ったかぶりの即席評論家」みたいな口調で語りあうのはもうやめよう。何も変わらない。
そんなモンはランチタイムの暇つぶしコミュニケーションでしかない。
やるべきことは何か。アホなりに考え抜いてみよう。
ピースサインは打ち上げでお姉ちゃんと写真を撮る時じゃなくてステージから出すもんだ。
忌野清志郎さんが「不確かなメロディー」という映画のライブMCで素晴らしいことを言ってたぞ。
『オレの夢は世界から戦争がなくなること。自殺する人がいなくなること。全国に愛人をつくること。』
3つ目も含めしびれたな。しかもあの事件が起きる前にだぞ。なあロックバンド野郎ども。「かかってこいよ」
とか「ラスト2曲ぶっ飛ばしていくぜ!」もいいけどたまにはこれぐらいのこと言ってみろよな。
もしかしてキミ達は平和が嫌いなんじゃないのか?
悲しいかなこの国の総理大臣は「ふぉ〜えっばら〜ぶ」とか口ずさんじゃって
多分ジ ョンレノンやボブディランをちゃんと聴いたこともないから妙に慌ててオカシナ決断するんだろうな。
オレならブッシュにこう言う。
「今回の事件は最悪だ。テロは絶対に許せない。でもアメリカと一緒に戦えイエスかノーか。 ファイナルアンサー?
 なんて極端な質問には答えられない。お前らつらいだろうしスゲェー怒ってるのはよく分かる。
 でも爆弾は絶対ダメ。悪いけどオレ達は決めたんだよ。昔オレら侵略したり他の国に無茶苦茶なこと沢山したしさ。
 真珠湾にも突っ込んだよ。その揚げ句お前らに強烈な爆弾落とされたろ。マジ参ったぜ。ボロボロだよ。
 でも誰 のせいとかもういいんだ。ただ二度とあんな思いさせたくないしさせたくないんだ。
 繰り返したら政治家のようにアホだろ。無意味に死んでいった人々に申し訳ないだろ。
 本当に強い人はケンカしないってオレのお婆ちゃん言ってたしな。だから爆弾反対。 no more fuckin' war!だよ。
 金は出す。いっぱい出す。でも条件付き。今回の争いでひどい目に遭った 人々のみに使ってくれ。
 そして宛名を日本国民様で領収書くれ。そんで毎月一回その金で買ったものをCNNで発表。弾なんか買うなよ。
 有効に使ってくれるんならもっと出す。来年お年玉は半額にしてその分送る。吉野家で卵一回我慢する。
 今月は風俗一回減らす。な。
 でも忘れないで欲しい。オレ達は戦争反対なんだ。なあどうやって終らせるつもりだ。
 引くに引けなくなってんじゃないのか。相談のるよ。もっと良い方法一緒に考えようぜ。」
笑ってもいい。別に賛同してくれなんて言ってるわけじゃない。そんなシンプルな問題じゃないのも分かってる。
アホなバンドマンカオルが考え抜いた結果がこれなんだ。
「豊田のオバサン」という人がいた。義理人情に厚く理屈が嫌いな人で人の痛みが分かる優しい人だった。
すでに他界してしまったがあの人ならきっとこう言うだろうな。
『ちょっとタリバン君。こっち来なさい。何があったか知らないけどダメだよ。あんな危ないことしちゃ。
 沢山死んじゃったじゃない。オバサン一緒に行ってあげるから謝りに行こう。ね。
 えっなに?革命?ジハード?アンタ鉄砲振り回してなに訳分かんないこと言ってんの?
 そんなのどうでもイイの!アンタね仕事もしないでそんなことばっか言ってるから見なさい。
 ちっちゃい子みんなお腹空かして泣いてるじゃない。かわいそうに。奥さんもすごくやつれてるよ。
 ホントにいい加減しっかりしなさい。さあいくよ!』多分こんな感じだな。マジでこれでいいと思う。
この文章が発表されるのは約2週間後だがほんのちょっとでも世界がいい方向に動いていることを願いつつ終りにする。
もしかすると平和とは祈るものではなく勝ち取るものかもしれないが。ピース。
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