薫風丸夢日記



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薫風丸夢日記1 「アジト」

これはアジトで見た夢である。愛猫レインもいなくてまったくのひとりという状況。
時刻は昼を少し回ったぐらいだと想う。
「現実のアジトで眠っている時に 
『夢の中のアジトで起きた』という夢を見た」という始まり。
ややこしくてすまん。

アジトの中で眠っていたのだが 
茶色い猫が2〜3匹部屋をうろうろしているような気配を感じて起きた。
(「夢の中で起きた」んだぞ。しつこいが念のため)
アジトには猫はいないし窓もドアも鍵がかかっているはず。
とりあえず見回りをしてみようと立ち上がる。猫の気配はない。夢だったのか。
ドアも窓も異常なし。トイレも風呂も特に変わったところはない。
コインランドリーの4倍ぐらいの大きさの巨大な自動洗濯機が台所にあり作動している。
ああこれはきっと乾燥まで自動でやるタイプだなと想う。モーターの音はとても静か。
小さな物干しにオレの靴下と女物の下着が5つぐらい干してある。下着は黒いシルクだ。
突然さっき異常がなかったはずの針金入りの窓の端の方が少し叩き割られていることに気づく。
とりあえずコレはアジトの持ち主であるA子に報告しなければと外へ出る。

ドアを開けるとすぐ長い下りの石段。
降りながら「あれ?アジトの持ち主はB嬢では?」と想い始めきっとそうだと確信する。
石段を降りきった踊り場のところに高校の同級生の中国人のY君がいる。
「ボクは早く来すぎたようだね」と背の高いY君は微笑みながら言う。
Y君は顔を伏せたレインコートを着た女性を数名連れていて 
「彼女たちは音楽業界の関係者なんだ」と照れくさそうに紹介した。

オレはとりあえず「報告の方が先だ」と「ゲート(巨大な門)・関所」へ向かう。
このエリアへ来る者は必ずここを通るので待ってればB嬢に会えると考えたのだ。
それにしてもY君はなぜオレの居所を知っていたのだろう?

ゲートの向こう側にB嬢を発見するが人混みに紛れてしまい見失ってしまう。
仕方がないのでオレの方が向こう側へ探しにいく。
ゲートを出るとまた長い石段だ。降りて直線のアスファルトの道路を歩く。
なんだかずいぶん疲れたな。途中の店で450円の9ボルトの直方体の電池を買う。
B嬢はアジトに戻ってるかも。疲れたし帰ろう。でもちょっと休もう。路上に座り込む。
「また引き返すのは非常に疲れるな」とぼんやりしていると 
「動く歩道」のように道路自体が動いているコトに気がつく。らくちんだ。
近くにいた犬を連れたおじさんが「コレは非常に便利なモノです」と自慢気に言う。
おじさんは時計を見て「よし。今日も2分20秒。ピッタリだ。また会いましょう」
と横の林道へ歩いていってしまった。オレは「林道の奥はきっと墓場だ」と直感する。

石段をのぼりゲートを抜け次の石段の踊り場にはまだY君がいる。
「やあ。やっぱり早く来すぎたようだね。あとで電話するから」
Y君と一緒にいる女性たちは何かを恐れているように見える。
きっとオレと目を合わせたくないからずっと下を向いてるんだな。

石段を上るとアジトの前の割れた窓のところに 
見知らぬエリートな雰囲気のオトコがいる。きっといい大学を出ているのだ。
スーツではなく清潔なポロシャツを着て銀縁の眼鏡をかけている。金持ちなんだろう。
「敵もバカだね。ここまで割ったら鍵を開けるなんてちょろいもんだ」
オレは言い返す。「この鍵はワールドロック社のモノだから頑丈です」
オトコはニヤニヤ笑いながら立ち去る。こいつが犯人ではと想う。

アジトに入るとなぜかC子がいる。雨に濡れているようだ。
雨なんか降っていなかったのに。
「ねえ。アナタは最近こんなところで暮らすのが好きなの?」と不思議そうに言う。
オレは「石段を上って疲れているから布団に潜る」と答える。
布団の敷いてある部屋に行き枕元の電話の電源を切る。
そして電池を買ってしまったことを後悔する。使い道なんてないのに。
C子の帰り仕度をする音が聞こえる。
「猫のことは気にしないで。猫はそういう生き物だから。
 特に茶色の猫は。あなたはそれをよく知っているはず」

布団の中は暖かいので急激に眠くなってくる。
しかしどうしても割れた窓が気になるし 
C子が鍵をかけたかどうかも心配で無理矢理起き上がる。

そして「現実のアジトの布団」で「実際」に目を醒ます。
こんな夢。

しかし起きた直後のオレは「夢とうつつ」の区別がついておらず窓の確認にいく。
窓は当然だが割れていない。Y君やB嬢の行方もまだ気にしている。
ドアの鍵も確認する。ちゃんと閉まっている。あたりまえだが巨大自動洗濯機もない。
でもカラダは「長い石段を何度も上り下りしたように」疲れている。

水で溶いたインスタントコーヒーを飲みタバコに火をつけ 
アタマを整理しているうちにやっと「夢だった」と理解する。
そして忘れないうちに一気にここに記した次第である。

この夢は「モノクロ」であった。

コレを書きながら 
「つげ義春さんならきっと不思議な漫画に出来るのだろうな」と想った。


おしまい。
 
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