薫風丸夢日記



<< 薫風丸夢日記トップに戻る
<< liblaryトップに戻る


睡眠薬の種類が大幅に変更になってからあまり夢を見なくなった。
見ているのかもしれないが記憶していないことの方が圧倒的に多い。
今回は「ホテル」の夢。
オレは「巨大な建造物」の夢はわりとよく見る。
パターンはだいたい同じで「出口や目的地がわからず歩き回ってる」だ。
でも今回のは違う。

いま起きた直後でまだ外は暗い。
メモしようとしたのだが「いきなり書いた方がいい」と判断し筆をとった次第である。
しかしだなあ。この「筆をとった」という慣用句も正確には違うし 
21世紀の現代では通用しないのでは。
でも「キーボードをタイピングした」というのは雰囲気が違うしな。

まあいいや。
忘れちまう。

さあ。はじめましょう。

薫風丸夢日記10 「ホテル」
  
巨大な細長いビル。あまり目立たない濃いブルー。
角を丸く削った三角形の鉛筆が地面に突き刺さっているようだ。
新横浜のプリンスホテルに似ているがあれは円柱だからなあ。色はそっくりだ。

オレはそのビルの最上階に住んでいる。
部屋までエレベーターで行くのだが1Fは「ショッピングセンター」なので混んでいる。
だから2Fにある「居住者専用エレベーター」を利用しようと階段で2Fまで。
1Fと2Fの間の踊り場で路上を見下ろすと 
外国製の高級そうなオープンカーが停車してる。
ピカピカの漆黒。
車にはカップルが乗っている。オトコは流行の格好をしているがなんだか野暮ったい。
知らないオトコだ。オンナはよく知ってる。「ストーン」だ。
ずっと前に短い期間だったけど激しく愛し合いオレが一方的に放り出したオンナだ。
オレは確信する。「ストーンはオレに逢いにきたんだ」と。
そんで「アンタがアタシを捨てたからこんなダサいオトコの車に乗るハメになった」と 
オレに文句を言いにきたのだ。

迷ったけれどその車まで降りていった。
オレは車のボンネットの上に土足で乗りフロントガラスにつかまりしゃがみ込む。
オトコは車体がへこんだので露骨に嫌なカオをするがオレに視線を合わせない。
ストーンは笑いながら「やっぱりネコみたいだね」と言う。
オレはオトコに言う。「おい。運転しろ。動かない車なんて意味がない。
 その辺ぐるぐる回れ。このクラシックカーはオマエの自慢なんだろ。見せびらかせよ」
オトコは不貞腐れながら断る。
「そんなところに座り込まれたら前が見えなくて運転できない。新品なのに」
オレはブツブツと言う 
「ちょろい野郎だ。ストーン。このちょろい野郎はオマエの新しい恋人か?運転手か? 
 どっちにしてもオマエには失望したよ。そして運転手のキミ。
 このホテルのビルから見渡せる範囲に姿を現すな。黒光りの車体がイライラする」
オレはフロントガラスを蹴飛ばしてビルに戻る。
背後でストーンとオトコが言い争いをしている。
でもすでにオレには「関係のないコト」だ。

エレベーターでオレの部屋のある最上階で降りる。
そこにはガキの頃どこにでもあったような「空き地」が広がっている。
鉄条網。ドラム缶。雑草と廃品の山。泥にまみれた古いエロ本。片方だけの靴。

ドアの前には知り合いの「PAマン」がオレを待っていた。
「カオル。カネ持ってるか?空き地のガキ共がいいモノたくさん持ってるみたいだ」
ガキというより20歳前後の浅黒い肌をした外国人がひとりこっちへ歩いてくる。
「おい。オマエなんかいいモノ持ってんのか?」
そう言うと外国人はポケットからビニールのパケに詰めた大麻を見せウインクする。
「カオル。これ上物だよ。な」「そうだね。上物だ。フラワートップだろう」
「おい兄ちゃん。ワンパッケージでいくらだ?ハウマッチ?」
外国人は指を三本立て「サーティーハンドレット」と言う。
オレはよくわからない。3000円ならべらぼうに安い。3万でも買う価値はある。
地面に木の枝で「3000yen?」とオレは書く。外国人はうなずく。
「よし。3つくれ。釣りはいらない」と一万円札を渡す。
外国人は人に見られないように握手するようなカンジで袋をオレに握らせ姿を消す。
PAマンとさっそく試そうとビニール袋を見るとさっきのと全然違う。
「種や枝ばっかの粗悪品」になっている。急激に腹が立ってくる。
PAマンもかなり怒っている。「カオル。あの野郎を殺ろう。カネもモノも取り戻そう」
「そうだな。でもどうする?外国人なんてみんなおんなじ顔に見えるぜ」
「ピストルを手に入れよう。片っ端から撃っていけばいつかそいつに当たるよ」

オレは「ストーンか運転手がピストルを持っている」と知っているので 
ふたりを探しにまたエレベーターに乗りさっきの車の場所まで急ぐ。
しかし車はない。
でも絶対にこの辺りの「ラブホテル」にいるはずだ。
オレはラブホテルの駐車場をしらみつぶしに早歩きで行こうと想う。
すぐ見つかった。2件目だ。黒光りの外車がある。
ラブホテルに入りドアノブを回す。どの部屋もみんな鍵がかかっている。
でも「ストーン」は鍵をかけないはずだ。オレが来るのを知ってるから。
アイツはそういうオンナだった。そうに決まってるんだ。

(この辺りで「現実のレインの鳴き声」が聴こえてきた気がするのだが「証拠」はない)

4フロアぐらい昇ったところで「その部屋」を発見する。
スーっとドアノブが回る。ほら。やっぱり鍵が開いてる。
オレは土足で部屋に入る。
ストーンが長いツルツルしたキャミソール姿ではしゃいで笑っている。
「おい。ピストルをくれ。オマエか運転手が持ってるはずだ。売人を撃つ」
「あるよ。バレッタっていう女物の小さいヤツだけど」
「それでいい。運転手はどうした?」
「たぶんバスルームに隠れているんだと想うわ」
「そうか。ついでに撃ってやろうか?」
ストーンは突然涙を流し始める。
「ねえ。カオル。入れてよ。さっきからずっと濡れてるの」

「めんどくさい。ピストルをくれ」
「入れてくれたら渡すから」
「入れながらオマエを撃つぞ」
「本望だわ」

オレはキャミソールをまくり濡れたところに挿入するけど何も感じない。
かなりヌルヌルしてるのはわかる。でもオレは気持ちよくない。
それでもピストルのためにオレは腰を振り深く深く突き刺す。
ストーンはオレの腰にしがみついて離さない。
バレリーナのように細い鎖骨。薄い乳房をオレは握りつぶす。
ストーンは潤んで吐息を荒げている。

「飽きた。ピストルをくれ」
ストーンは泣きながら言う。
「ごめんなさい。ピストルなんて持ってないの」
「なに?じゃあ運転手が持ってんのか? 
 だとしたら。オレたちは非常に危険な状況だな」

バスルームからオトコがのぞいている。
でもそいつは運転手じゃなくてイカサマした浅黒い肌の売人だ。
売人はニヤニヤしながらピストルで自分の手を撃った。
肉片のようなモノが飛び散ったのだが 
なぜかその場面だけ「スローモーション」だった。

メガ醒めた。

これは「悪夢」か?「淫夢」か? 
なんだか「精神分析医」が喜びそうな夢だな。
ひどく攻撃的な気分だったよ。
サディスティックな「原始的欲望」が熱かった。
途中で「夢だ」とうっすら気がついてたような。

「ハードボイルド」な夢であった。

昔々世界中で戦争が流行っていた頃どの部隊にも「鬼上官」がいた。
そのタフで猛烈で冷酷な上官は 
「一般兵」とは違う「固茹で卵」のような色の軍服を着ていたらしい。
それが「ハードボイルド・ゆですぎた卵」の語源らしい。

じゃ。
また「夢の世界」でな。
おしまい。

 
topへ↑