薫風丸夢日記



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「なんで夢を見るのか・その仕組み」みたいのは100%解明されていないらしい。
筒井康隆さんの「夜のコント・冬のコント」という短編集の冒頭に収録されている作品に 
「夢の検閲官」という小説がある。
夢に興味がある方はぜひ読んで欲しい。立ち読みで15分もあれば読めると思う。
詳細は書かないが非常に「なるほど」で優しくユーモラスな作品である。

カオルの「アタマの中」にも「夢の法廷・検閲官」がいるとするなら 
彼らはカオル同様相当の「へんてこりん」な方々だと思われる。

さあ。はじめましょう。

薫風丸夢日記9 「銀色のオモチャ」

カオルは「20代の頃暮らしてた古いアパート」にいる。2段ベッドの上。
椅子の上には黒猫レインと当時暮らしていた片目の見えないびっけちゃんが 
寄り添ってまどろんでいる。
おふくろがオレにどんぶりを持ってくる。「お腹空いたんならコレを食べな」
大根のみそ汁のようだが煮えてなくてガリガリする。
2段ベッドにはずいぶん前に他界したはずのおばあちゃんが病で臥せっているようだ。
おふくろが優しく語りかけている。
「おばあちゃん。寒くない?なにか食べたいものはある?ネコ達が遊んでってさ」

突然場面は切り替わりカオルは「武道の道場」のような畳の大広間にいる。
たくさんの武道着を着用した連中が正座をして一列に並びカオルもその中にいる。
道場主のような坊さんが指令する。「お前達。これから葬儀の修行をする。
外へ行って骨を1本ずつ拾って来なさい」
全員猛ダッシュで外へ。庭にはたくさんの骨が落ちている。
どれも清潔で白い。カオルもみんなと同じようにひとつ拾い大広間に戻り正座する。
坊さんが言う。「さあ。お前達。自分の小刀で骨を輪切りにしなさい」
みんな懐から小刀を出しキュウリを薄切りにするように骨をすーっと切っていく。
カオルは小刀を持っていない。怒られたら嫌だなあ。
「すいません。カオルは庭に小刀を落としてしまったようです。探してきます」

そのまま外へ出る。商店街のようなところにやぐらが組んである。
餅やお菓子やタオルなどをやぐらの上から庶民達に偉そうな人が撒いている。
「あの親父は『黄色い看板のイワシラーメン』のヤツだ。
 そうか。町内会長に選ばれたんだな。どうせワイロを使ったんだろうけど」
カオルは人混みからはなれ電柱のところに座り込む。
すると5歳ぐらいの少女が近づいてきて「遊んでくれる?」と言うので「もちろん」と。
少女はポケットの中から「銀色のオモチャ」を取り出す。
切手ぐらいの大きさの薄い銀色の板が何十枚もあり磁石のようにくっつくので 
「自由に組み合わせていろんな形を作れる」のだ。
少女があるカタチを作る。「いいね」少女は照れくさそうにオレにそれを渡す。
オレは少しアレンジして少女に返す。くりかえし。あやとりのようだ。
しばらくすると少女が寂しそうに「もうお家へ帰る時間だから」と言う。
確かに空はずいぶん暗くなっている。「また遊んでくれる?」「もちろん」
「じゃあその時にこのオモチャまた持って来てね。大事にしてね」
少女は夕暮れた路地の方へ走り去っていく。
カオルは「名前を聞かなかったコト」をとても後悔している。

ちょっと先に「ビルの工事現場」がある。「遅くまで大変だな」と思う。
職人さん達の働く手際の良さが面白くカオルは眺めている。
いつの間にか隣に「ネジちゃん」がいる。ニコニコしている。
「久しぶりね。匂いが同じだわ」「オマエも相変わらずミルクのような匂いだぞ」
オレは「職人さん達の仕事」についてあれこれ解説する。
ネジちゃんは楽しそうに聞いていたが「もう遅いので泊まろうよ」と言う。
とても狭い「カプセルホテル」の中にふたりは入る。
オレは銀色のオモチャを取り出し「いいカタチ」をつくり見せようとする。
しかし隣にいるオンナはネジちゃんじゃない。知らないオンナだ。
綺麗なのだがとても厚化粧なのですごく気分が悪くなる。「オマエ誰だ?」
「アタシはグラビアアイドルよ」とそのオンナは言う。
オレはますます気分が悪くなり「こいつには銀のオモチャは見せない」と決める。
「オレ帰るぜ」「遊んでくれないの?」「ああ。遊んでくれない。じゃあな」

外へ出る。もう真夜中だろう。とぼとぼと歩く。
そして急に「確信」を。
「そうか。あの少女は『5歳の頃のネジちゃん』だったんだ」と。
オレはなんだか情けない気分になる。

ここでメガ醒めた。

起きてからもなんだか切ない気分だった。
この夢は「失ったもの」が多く様々な「カタチ」で登場していたからだ。
「すべての夢」に「意味」があるとするならば 
コレはいったいオレとって「どんな意味」があるのだろうか? 

それにしても「銀色のオモチャ」は素敵だった。
ピカピカしててさ。手触りもよくて。金属なのに暖かいんだ。
どっかに売ってないかな。

おしまい。
 
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